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私と文京区

『私と文京区』

石塚美恵子
(南西地区)(株)アーバンアセット研究所

文京区でお仕事を始めてまだ1年半くらいですが、大変心地よく感じているこの街について少し書かせていただきます。
文京区支部は文京区の歴史と共にあるともいえ、古くからの不動産業の方が多いこと、また、歴史的建造物も多く、学者、文化人が多く住んだこの街で、皆様の不動産に関する思いやご苦労もひとしおかと考えます。
個人的には歴史ある建物が大好きで、骨董や美術的なものも大好きな人間ですので、この街は大変好きな街ともいえます。そして、私がこの街の特に好きなところは、地形的に変化に富み、坂道が多いことです。
神戸出身で坂の多いところで過ごしたからかもしれませんが、坂が多いということは風景に変化を与え、歩いていても楽しく、次の風景への期待を与えてくれます。また風の流れもあり、坂を吹き上げてくる風は心地よいものです。
「そんなことは元気なうちだけよ」と言われるかもしれませんが、今の時代は人には過保護ともいえるほどの整った環境に恵まれ、かえって運動不足になっているように感じます。その裏、スポーツクラブで歩いたり自転車をこいだりする方が増えていませんか。なんだか変、と思うことが多々ある中で、日常生活の中で無理なく運動を取り入れることが理想的で時間も無駄にしなくてすみます。
地形の話でいいますと、昔の地名からその土地の過去の状態が分かると先日ある番組で見ました。現在は水の流れまでも変えたり、盛土で過去の地形が分からなくなっていることが多く、いざ震災となったときに実は昔は谷だったり、川であったとかを知ることがあります。その土地の歴史をさかのぼって知ることは災害に備えることであるかもしれないのです。自然の地形にあまり逆らわず、生かす方向で計画された街づくりは、きっと住み心地もよいのではないでしょうか。ただし、不自由な方にはやさしい街であるべきと思いますので、仰々しく見えない知恵と工夫が随所に隠れている街がいいと思います。
歴史ある建物などは昔の人の知恵やいわれが隠されていて、景色に溶け込むように風景となり歴史を重ねた風格を残しています。大切にすることはそこに長年住んでこられた方の歴史を大切にすることと同じことです。
神戸は震災で多くの建物が壊れ、失われ、新しい復興の建物が増えましたが、昔の石造りの建物は壊れずに残りました。しかし行政としては建て替えたいらしく、今その建物たちの保存運動を私の友人たちが行っています。あの地震に耐えた建物ですから、補強で乗り越えられるはずと私も考えますし、また、今の時代に簡単に建築できる建物ではない石造建築の歴史の重みを感じさせる建物なのです。
今の時代にとっては貴重な建物などは、「大切に使用する責任」「保存し維持する責任」を持って使用し、次世代に繋げていくことが大切だと思います。そのためには個人だけの責任にとどまらず、公的なバックアップや法制度など乗り越えなければならない問題もあると思います。
フランスでは、古い歴史のある建物に住み所有する人は、修復する際にその建物と同じ年代の素材を探して調達してこなければリフォームや修理はしてはならないという法律があり、歴史的建築物を大切に扱っているといいます。維持し保存し使っていく心と資金力がなければ持つことができないということかもしれませんが、それが文化を守っていくことにも繋がっていくのではないでしょうか。現実は厳しいですが、安易に利益追求の姿勢で日本のすばらしい文化を壊すことは恥ずかしい、という意識を持つ人がもっともっと増えることを望んでいます。
私の好きな坂道を歩き、景色を楽しみ、筋力を落とさないで、日常を大切にして、元気に暮らすご年配が多くいる、そんな素敵な文京区であってほしいと願いつつ、「歴史と文化の香り高い文京区」でお仕事をする喜びを感じている今日、この頃です。願わくは生涯現役でお仕事にかかわり、やんちゃな年寄りを目指したいと思っています。
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