ツーブロック禁止の理由(ワケ)

千田貴則 北地区2班/(有)仲良ハウス

先日、中学二年生になった息子との会話でこんなことがあった。
通っている中学校の先生曰く「ツーブロック禁止」と。それに対して息子が「おかしいよね?」私は、なぜ禁止なのか訊いてみたが、本人も理由を先生に尋ねたわけではなく、言われるがまま「禁止」だから「ツーブロックはしてはいけない」と心に留めたが、どうやら腑に落ちないでいたらしい。息子はツーブロックにしているわけではないのだが。
「ツーブロック」というのは髪型のネーミングで、サイドは刈り上げるが対して頭頂部の髪は長さを残す。刈り上げ部分を露出させたり、残した髪でサイドを隠したり。アラフィフの私が高校生の頃にも流行ったが、この数年も何度目かのブームで、幅広い世代にタイプを問わず受け入れられているので、私としてはスタンダードな髪型だと思っていた。
校則で禁止されているのかも?と二人で生徒手帳を見てみた。髪型の項には「中学生らしい清潔な髪型」とし、脱色、染色、パーマなども禁止。眉、耳、襟に髪がかかってもいけない、とある。しかし「ツーブロック禁止」とは書かれていない。
「その先生は禁止のほうがいいと思っているだけなのかもしれないね」と私。先生の真意はわからないが、流行り=風紀の乱れといった単純な考えなのでは、という気がしてならない。
「ところで、校則って変えられるの?」と息子。もしも学校のルールを変えたいなら、同じ意見を持つ人を集め、生徒会で話し合い、校長に要望書を出すなどやり方があるということを伝えた。また、ツーブロックにしてみたいのであれば、「清潔な髪型」であると父親として先生に申し出ても良い、とも。
ただ、学校や先生は生徒を縛るためにルールを作っているのではなく、生徒が安全に生活できるようにルールで秩序を保ってくれている。ルールがなく自由にしていいと言われたらどうする? 制服を着なくてもいい、どんな髪型でもいいと言われたら? みんなどんな服装で学校に行くかな? 制服があるっていうのは毎朝服に悩む時間も手間もかからず、ある意味楽でみんなにとって平等なことでもある。自由でいることには責任が生じるのだ、と親なりの考えと気持ちを伝えてみた。
「それはたしかにヤバいかも……」ルールがなくなったら、今の自分ではまだどのように行動したらいいかわからないかもしれない。ましてや、仲良くしている友人のなかのちょっとやんちゃなタイプのアイツ……。自由にしていいとなったらアイツがまず調子に乗って暴走するのではないか。髪をツーブロックにしてやりたい放題するアイツの姿やそれに右往左往する自分の姿……。びびり屋の息子は秩序のなくなった学校生活を想像し、「ルールの必要性や大切さ」を少し理解し始めたようだった。
そんな会話が一段落したとき、テレビのニュースで今日逮捕されたという男の姿が映し出された。バチバチと焚かれたカメラのフラッシュのなか、うつむきながらも上目遣いに鋭い視線を投げたその若い犯人は、ゆるいパーマのかかった髪でサイドがキレイに刈り上げられたキメキメのツーブロックだった。
それを見た息子は苦い顔をし「ツーブロックはヤバいかも……」との答えに至ってしまった。