都市計画審議会委員に支部会員を!
佐藤豪一 文京区議会議員
東京不動産企画株式会社(東地区4班)代表取締役
私が区議会議員になったきっかけは皆さまご存じのように、平成26年4月に施行された「文京区絶対高さ制限に対する高度地区の利用」条例に対する支部としての反対活動です。
この条例の問題は、当時奈良部支部長の下、私は住民の立場、支部消費者保護推進委員長として住民の財産権を守る立場でこの条例の問題点について行政や議員に訴えていました。
問題点を整理すると
この条例(高さ制限)により、特に商業系地域は容積率を消化できなくなるので、不動産評価、流通価格に影響を及ぼすこと。
この条例(高さ制限)により、行政は建築紛争が減少するというが、建築紛争とは利権が絡むのでこの条例施行での減少は見込めないこと。
この条例(高さ制限)により、総合設計制度の高度利用の利点を活用できないこと
この条例(高さ制限)により、遵法性のある既存の建物が既存不適格建物になること 等でした。
このうち、我々の助言により総合設計制度の高さは制限の 1.5倍までに引き上げられ、既存不適格の問題につきましては、一回の建て替えは同様の建物でよいということに区は変更しました。しかし、一回の建て替えでは財産権を永遠に保証できない問題は残ります。
区分所有建物の建て替え問題は深刻で規制を緩和したほうが再建築費に充当できるため、規制ありきでは50年後100年後の区内区分所有建物建て替えに条件が合わず、仕方なくそのまま老朽化し、空き家住戸も増えることが懸念されます。今のうちから条例を見直す必要があるのです。文京区の住環境を保全し、より良いまちづくりをするためにも支部のみなさまと力を合わせて、行政と膝を突き合わせる必要があり、それは区内不動産取引の流通健全化を図るためにも必要なことだと思っています。
議員を6年務めて気がついたことは、この条例を決定する権限を持つ文京区の都市計画審議会委員の構成についてです。現在、学術経験者3名、関係官庁3名、公募区民3名、区議会議員7名で構成されていますが、文京区民の財産にかかわる大事な条例を何故このメンバーで決定するのかということです。私は議会や委員会で再三そのことについて指摘し、委員の見直しを求めています。
また、都内23区中14区は時代の流れに対応し、都市計画審議会委員の構成を変えています。学術経験者は大学などの専門的な教授などに加え、区内不動産業界や建築士事務所組合、区民も公募のみならず、区民の代表的な町会連合会や商店街連合会などを都市計画審議会の構成メンバーに入れているのです。
「群盲、象を評す」インドの寓話にありますように、人が目をふさいで象を触ると、象の耳を触った人は「大きな団扇」という、尻尾を触った人は触れば「ロープ」という、体を触れば「壁」といい、鼻を触れば「大蛇」というのです。人それぞれ見方や意見が違うのです。
目を開き、しっかり全体像を把握しなければ「象」という答えが出ないのです。これは都市計画審議会でいうと建築基準法や都市計画、用途地域を知らない人達に文京区のまちづくりを問うたところで住居系に住んでいる人は「マンションなんかいらないから全て低層にしろ、建築紛争だ」だとか「隣に保育園ができるのは嫌だから反対運動する」とかいう話になるのです。
区民として用途地域のあり方や建築基準法で守られていること等、それぞれの権利や役割を最低限把握している人に都市計画審議会の委員としてテーブルについてほしいものです。
今思い起こせば、平成25年にこの条例に反対する活動をするために、業協会を代表して区議会の各会派を当時の奈良部支部長や原元支部長と廻り、一生懸命に説明をしましたが区議会議員はみなこの条例について専門的鵜な知識がないので、説得すること、充分に理解させることができませんでした。都市計画審議会は行政の描いたまま、一部の学術経験者委員の仕切りによって、是々非々の議論がないままに条例が平成26年に施行されてしまったのです。
今の私ならば、公聴会をする必要性を訴えたり、特別委員会を設置したり、場合によれば総務省に不服申し立てをすることが可能で、当時集めた2000名の反対署名も区長宛てでなく、議会宛てに出せば署名がもっと生かせたはずだと後悔しています。
二度と区内の条例をコレクティブ・インパクト(様々なプレイヤーが共同して社会課題解決に取り組むための一つのスキームであり、共同の効果を最大化するための枠組みのことを指す。ある特定の社会課題の解決に取り組むプレイヤーは自治体、企業、NPO、政府、財団など様々な分野で多数存在する。)の熟議なく決定してはいけないと思い、私は先ずは都市計画審議会の構成委員の見直しを訴えているのです。
しかし難しいのが、与党多数で強引に構成委員の見直しをしても野党からの反発が避けられないため、時間を多少かけてでも、都市計画審議会の役割と熟議の必要性、また、そこに参加する委員の責任を明確にしてテーブルについていただく理解を得て、構成委員の見直しの願いが叶った際には是非、我々宅建業協会を始め、建築士事務所組合や町会連合会、商店街連合会など区内を専門的に知る、又は区のために熟議ができる委員の構成にしたいと思うのです。
今の都市計画審議会は全く機能していない。ここで区民の財産にかかわる条例を作成することにはゾッとするのです。
都市計画審議会に我々業界が入り、区の重要な都市計画案件を熟議できる環境を整えるまで私の議員活動は続きます。